はじめに
桜が咲いたと思ったら、あっという間に散ってしまい、そうこうしているうちに山がモザイク柄の萌黄色に彩りはじめました。一方、私たちもバタバタと、何かと忙しい季節ですが、今年もやってきました。あの夫婦が。そう。ツバメ達です。
昨年巣立って、「帰ってきたらいいなー」と思っていたツバメが帰ってきて、邪魔しないように観察する日々。大きな翼で自由自在に飛び回れる姿に憧れてしまう。かっこいい。(=ω=)
そういえば、あまりツバメのことを知らないなと思い、今回色々調べてみました。

改めまして、「ツバメ」とは

ツバメは、スズメ目ツバメ科ツバメ属に分類される鳥類です。
世界中に83種のツバメ科の鳥がいると言われていますが、日本で普通に見ることのできるツバメの仲間は5種類だそう。北半球の広い範囲で見ることができ、春になると北半球にやってきて、冬になると南半球に帰っていきます。日本にいるツバメは、越冬するために主に台湾、フィリピン、ボルネオ島北部、マレー半島、ジャワ島などを選ぶようです。3月になると日本に帰ってくるので、「春を告げる鳥」としても有名ですね。
ツバメは、他の鳥に比べると胴体の大きさに対して翼の長さが長くなっています。大きく見えるのですが、翼の長さの影響のようです。特に、二股に別れた尾が特徴的ですね。身体は流線型をしていて、長い翼と合わせて飛ぶことに適したつくりになんだとか。飛ぶのが非常にうまい鳥なんだとか。
下の図は、ツバメの大体の1年間のスケジュールです。なかなか忙しく、結構充実した1年そうです。(・ω・)
行動 | 詳細 | |
3月頃 | 日本にやってくる | パートナーを探して、繁殖の準備。 |
〃月末 | 産卵始める | もっとも早くてこの時期から |
4〜5月頃 | 1回目の繁殖期 | 約1ヶ月半ほどかかる。 |
6〜7月頃 | 2回目の繁殖期(全てではない) | 子育て終了。子供と共に昼間は餌を取り、夜はヨシ原などでねぐらを取る。 |
9月頃 | 渡りの準備 | 南に向かい始める |
10月〜翌2月頃 | 越冬地で暮らす |
春に日本に来るのは、どうして?
ヒナ達に与えるエサがいっぱいあるから
「気候が過ごしやすいから?(・ω・)」と思っていたのですが違いました(笑)。
ツバメは、春に繁殖して子育てをするために日本にやって来るのですが、それは自分たちが生きていくために食べるエサに加えて、ヒナたちに与える多くのエサがその時期日本にはあるから。春に発生する大量の虫は、彼らが冬に過ごす越冬地よりはるかに多いのだそう。そんなに発生することも知らなかったのですが、子育てには最適なのでしょう。ハエ、ハチ、アブ、羽アリ、カゲロウなど、飛んでいる昆虫がツバメの主食だそうです。
そして、虫を手当たり次第食べているのかと思えば、そうではなく、きちんとエサ(虫)を選んでいると最近わかってきたのだそう。同じ大きさの虫でも適した栄養を多く含むエサの方が好むだとか。
ツバメと人との深い関係
ツバメは、人のいる場所・人工物に巣を作ります
これは、他の鳥に比べると非常に不思議なことだそうです。人が住む環境のそばにいる他の鳥でも、巣を作る場所だけは自然のものを利用するのがほとんどなのだそう。ツバメのように人工物だけに巣を作る鳥はかなり珍しいのです。そして、どういう経緯でこのようになったかも諸説はありますが、今だに謎が多いのだとか。
これは、森の中で住むより人間の近くに住むほうが、天敵を効果的に避けることができるからと考えられています。この手段をとっているためか、他の鳥に比べると敵の数が非常に少ないようです。ただ、同じように人間いる場所の近くで生息するカラス、アオダイショウなどのヘビ、ネコ、ネズミなどの捕食者には警戒しないといけません。
前の巣を補修して使うことが多い

巣は泥とワラで作ります
この点が、日本の土壁と通じるものがあるので、勝手に親近感を持ってしまいます。
家にいるツバメを観察していると、一から巣を作っているのではなく、すでにある巣を補強して(増築?)いるのを発見!しました。調べてみると、どうやら春先に一から巣を作ることは稀だとのこと。作るのに5〜7日間かかるのですが、早く子育てを始めたいと思うツバメたちは、前の巣を補修したものを使ったほうが都合がいいのです。
そして、一から作るときは、1回目と2回目の繁殖の間で行われるのだそう。実は、巣の中には寄生虫が住んでおり、それらは巣の中にいるヒナの血を吸って生きています。ヒナが巣の中にいると寄生虫の数も増えるので、2回目はできるだけ巣を変えようとすると考えられています。なんだか、気にしないといけないことが多くて、ツバメ達も大変です。(・ω・;)

ツバメのおすすめ書籍を紹介【本記事の参考書籍】
今回ツバメを調べてみて思ったことは、人の近くに住んでいるのに、ツバメは意外と謎が多いということ。書籍を読んでいると、「同じツバメが戻ってくるの?」とか「ツバメは仲がいいの?」とか「どんな経路を渡っているの?」とか、好奇心をそそられるテーマで様々な仮説を用いながら丁寧に説明されています。この記事で紹介した内容は、ほんの一部に過ぎないので、もしご興味があれば、ツバメの書籍の一読をオススメします。とても楽しいですよ。
「ツバメの謎」 著者:北村亘
こちらの本は、コンパクトでわかりやすくツバメのことについて書かれています。ツバメの入門書として、はじめに手に取るのに適した本だなと感じました。この本の素敵だなと思ったところは、科学的な見方・考え方をツバメの解き明かす作業を通じて、さりげなく紹介しているところです。著者もツバメを観察して調べて行く中で、この考え方を身につけていったとのこと。
僕たちの身の回りには不思議でわからないことがたくさんあります。それらを解き明かすには、闇雲に物事を調べるのではなく、ある一定の考え方に従って研究を進めていく必要があるのです。
それが科学的な考え方と呼ばれるものです。
「ツバメの謎」p.136より抜粋
科学的な考え方を身につけることができれば、ツバメだけでなく、ほかの鳥や別の生き物、もしくはこれまでにわかっていない世界のいろいろな謎に興味があった時に、それを解き明かして行くことができるようになると、本書では書かれていました。自分の身近に、まだまだ知らない世界があり、それが少し解るととても心がウキウキしますよね。日々の何気無い生活が、とても豊かになるような感じがします。
「田んぼの生きものたち ツバメ」
こちらも、入門書としてオススメです。児童向けの本ですが、非常に多くの写真や図解がありすごくわかりやすい!卵が孵化した日から巣立つまでの写真で記録していたり、虫を取る瞬間や、飛びながら水を飲む瞬間(器用ですね)など、普通では見ることができない様子を写真で収めているのが魅力的です。
「ツバメのひみつ」 著者:長谷川克
こちらは、もっと詳しくツバメのことを知りたい、最新のツバメ情報を知りたいという方にオススメです。非常に多くの論文を引用しているのにもかかわらず、専門家ではない私たちにも非常に読みやすいと思います。専門用語の解説があり、丁寧に順序立てて記載されているので、話がすっと頭に入ります。きちんとした裏付けの説明もあり、またわかっていない所はわかっていないと記述があり、研究に対して、ツバメに対して、この本を作るにあたっての丁寧さを感じさせる本だったので、出会えてよかったと思う本でした。少し厚めの本なのですが、それを感じさせないほど、あっと言う間に読み進められます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
人に好かれるツバメ。意外と知らないこと、いまだにわからない部分が多い事に驚きましたが、今年も無事、子育てが終わってまた旅に出かけられることを祈って、見守っていきたいと思います。
デワデわ。